Argentumの翼
空は今日も晴れていた。
暑かった夏にいつの間にか別れを告げ、空はすっかり高くなっている。水色から青のグラデーション、薄い雲が細長く伸びていた。
この町の名を「塔都[トウト]」という。
その名の通り、中心にあるのは塔、それも天まで伸びる塔である。白を基調にガラスのアクセントが入った塔は、10年前、まだここが「東都[トウト]」と呼ばれていた頃にはなかった影を、今は一日かけて周囲に回す。
「貫天塔」とは言うもののその正体は塔ではなくエレベーターである。
20年ほど前のある日、太平洋に飛来物が落下した。当初は隕石かと思われたが、それはどの国の航空部のレーダーにも感知されなかった。
地球は宇宙外部の知的生命体と初めて接触した。
これは地球に大きな衝撃をもたらした。もしかしたら、いつかきっと、といった言葉に込められた夢が、人々が思い描いた空想が、本当に起こったのである。
しかし現実として、宇宙レベルから見た地球はまだまだ発展途上であった。地球内には依然として複数の国家が存在し、宇宙との接触は国連を中心に行われている。
ここ日本にも国連の管理下でいくつか宇宙エレベーターが設置され、麓では宇宙人街が形成されて賑わっていた。そのうちに民間企業もエレベーター開発に関わるようになる。10年前に完成したこの貫天塔もその一つで、企画母体はつばさの叔父が関わる民間企業である。
*
声も出ず
風と、空を切る音と
少女が振りかぶった薙刀の切っ先
目を閉じることもできなかった。
空は今日も晴れていた。
硝煙になびく銀色が、私の目に焼き付いて離れなかった。
Charactor
豊原つばさ 地球人の少女
銀(Revlis Argentum) 宇宙人の青年 つばさの家に居候中
相川和平 つばさの従兄弟で一緒に暮らしている
プラチナ(Yler Platinum) 宇宙人の女性で銀の部下
水銀(Yrucrem Hydrargyrum) 宇宙人の青年 銀と敵対している危険人物
鉛(Eru P Plumbum) 水銀の手下の少女 水銀を兄さんと呼び慕っているやはり危険人物
鉄(Kees Ferrum) 宇宙人の青年で銀の友人 浮気性だが錫だけが本命
錫(Feiler Stannum) 宇宙人の女性で銀の部下 鉄の恋人
銅 銀の友人の科学者